補助金2026.07.17予兆

最低賃金がまた上がる前に。賃上げに合わせて設備を買うと、代金を国が助けてくれる制度が9月に始まる

読む時間 10

この秋、最低賃金がまた上がりそうです。いくら上がるかは、いま国で話し合っている最中です。

時給を上げるのは小さな店にはつらい。でも、その賃上げに合わせて機械や設備を買うと、代金の一部を国が出してくれる制度があります。

名前は「業務改善助成金(ぎょうむかいぜんじょせいきん)」。令和8年度(2026年度)は9月1日から申し込みが始まります。お店で一番低い時給が1,050円より下なら、設備代の「5分の4」が出ます。前もって計画を立てられる店には、賃上げの負担を軽くする手です。

業態トレンド予報

予兆。 制度そのものは前からあります。でも「この秋、最低賃金が大きく上がりそう」と「賃上げに合わせた設備代を国が助ける制度が9月に開く」タイミングが、いま重なります。賃上げのお金に悩む小さな店が、この秋にこの制度へ目を向ける動きは増えそうです。

ただし手間や「先に買うと対象外」の制約もあり、すべての店に向くわけではありません。

何が起きているか

はっきりしている事実は、次の3つです。

(1)去年(令和7年度)の最低賃金は、過去いちばんの上がり方だった。厚労省によると、去年は全国平均で1,121円。前の年(1,055円)より66円上がり、いまの仕組みが始まった昭和53年からいちばん大きい上げ幅でした(2025年9月5日発表)。

(2)今年(令和8年度)の最低賃金は、いま話し合っている最中。中央最低賃金審議会が2026年7月10日に2回目の会議を開きましたが、この記事の時点では金額は未定です。

(3)その賃上げに合わせて使える「業務改善助成金」が、今年は9月1日から申し込み開始。一番低い時給を50円以上上げ、仕事が速く・楽になる設備を買うと、設備代の一部(多くて600万円)を国が出す制度です。

おもな中身(今年のパンフレットより/事実):

  • 使える店:中小企業・小さなお店(大企業やその系列は不可)。一番低い時給が今年の最低賃金より低く、クビ切りや減給をしていないこと。
  • 国が出す割合:一番低い時給が1,050円より下なら「5分の4」1,050円以上なら「4分の3」。時給の上げ幅で50円・70円・90円のコース。
  • もらえる上限:コース・人数・店の大きさで決まり、多くて600万円(自分の店の上限は要領で要確認)。
  • 申し込み:9月1日から。締め切りは、自分の県で新しい最低賃金が始まる日の前日か11月30日の早いほうまで。
  • 注意:国が「OK」と決める前に買うと対象外。賃上げは最低賃金が始まる前日までにすませます。お金に限りがあり、途中で締め切ることもあります。

なぜ今なのか

(見立て) ここ数年の流れが続くなら今年もそれなりに上がりそうで、時給が最低賃金の近くの小さな店ほど秋に人件費が増えてつらくなります。この制度は「どうせ賃上げも設備も要るなら制度に乗せたほうが安い」と考える店を増やしそうです。時給の低い地方の小さな店ほど割合が5分の4になり、手厚い方向です。

※ ただし「今年いくら上がるか」はまだ未定。ここは見立てで、金額が決まるまでは当たるか分かりません。

大手はどう動いているか

(事実) この制度は「中小企業・小さなお店」だけが対象で、大企業やその系列は使えません。大手チェーンが使う制度ではありません。

(見立て) 大手は自分のお金や計画で賃上げ・省人化を進めやすい(PASSの前の記事「倒産は過去最多。なのに大手は出店を増やしている」も参照)。逆に、国の助けを使う余地が大きいのはお金の少ない小さな店。数少ない「小さな店に向けられたお金」です。

小さな飲食店にどう関係するか

関係する店

  • 時給が最低賃金の近くの店(特に一番低い時給が1,050円より下の地域・店)。割合が5分の4で助けが大きい。
  • どのみち賃上げが必要で、設備も考えている店。セルフレジ・POSレジ、予約やお客さん管理のシステムなどが対象になりえます。
  • 数か月先まで計画を立てられ、OKを待って買う段取りが組める店

関係しない店

  • もう時給が最低賃金より十分高く、今回は上げなくていい店
  • 今すぐ設備がほしい店。OKの前に買うと対象外で、急ぐ買い物には不向き。
  • 書類や計画に時間・人手を割けない店。手間が得を上回ることもあります。

小さく試すには

  • まず「うちは対象か」だけ確かめる。 一番低い時給が、この秋始まる最低賃金より下になりそうか。電話1本でタダで聞けます(業務改善助成金コールセンター 0120-366-440)。
  • 上げる幅に近いコース(50/70/90円)を選ぶ。 その上限内で「もともと欲しかった設備」を当てはめられないか考える。買い物を増やすためでなく、予定の買い物を安くする発想で。買うのは国のOKを待ってから(鉄則)。
  • お金が不安なら借りる窓口も。 パンフには日本政策金融公庫の「働き方改革推進支援資金」(賃上げする店向けの融資)も載っています。助成金は後払いで、いったん立て替える点に注意。

真似しない方がいい部分

  • 「600万円もらえる」につられないこと。 600万円は90円コースで10人以上を上げる大きな店の話。1〜3人の小さな店とは別物で、自分の店の上限を必ず確かめる。
  • 制度があるからと、要らない設備まで買わないこと。 5分の4が出ても残り5分の1は自分の負担で、一度立て替えます。
  • 賃上げを一時のことと考えないこと。 この制度が助けるのは設備代(最初の費用)だけ。上げた給料は基本戻せず、あとの人件費は店がずっと持ち続けます。

反対意見・失敗の可能性

  • 今年の最低賃金が、思ったほど上がらないかもしれない。 そうなると制度の「使いどき」感も弱まります。金額が決まるまでは、この記事の前提そのものが未確定です。
  • 手続きが重い。 計画を出す→OK→やる→報告、と段階が多く、OKの前は動けません。小さな店では手間が得を上回ることもあります。
  • お金の枠が先になくなるかもしれない。 途中で締め切ることもあり、「9月に開くから急がなくていい」とは限りません。
  • 後払いで立て替えがいる。 もらえるのは全部終わったあと。手元のお金が少ない店ほど立て替えがきつい、という逆の面も。

予報の確度

  • たしか:去年1,121円・66円上げ・過去最高。今年の金額は協議中。助成金は9月1日受付で、コース・割合・上限・条件はパンフレット通り。
  • 見立て:今年の上げ幅。この制度を使う小さな店が実際に増えるか。
  • 未確認:小さな飲食店の申し込み・採択の実データ(未入手)。上限額の細かい人数区分は最新の要領で要確認。
情報源・確認日を見る
  • 厚生労働省「業務改善助成金」(制度案内・最新の交付要綱/要領・Q&A)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/shienjigyou/03.html

  • 厚生労働省「令和8年度業務改善助成金のご案内」(リーフレット・R8.4時点)

https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001693416.pdf

  • 厚生労働省「令和8年度中央最低賃金審議会 目安に関する小委員会(第2回)資料」

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_74463.html

  • 厚生労働省「全ての都道府県で地域別最低賃金の答申がなされました」(令和7年度)

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_63030.html

  • 厚生労働省「令和7年度地域別最低賃金額改定の目安について」

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_60788.html

記者 安東 菜津

編集長手記

僕はこの秋、最低賃金が上がるのに合わせて、うちの時給を全体的に上げるつもりだ。正直、負担は軽くない。

この記事を読んで、賃上げと設備の買い物をセットにすると国が助けてくれる制度があることを、はじめて知った。しかも、前の記事で僕が「欲しい」と思った急速冷凍機と、そのまま線がつながった。急速冷凍機があれば、一度の仕入れを増やせて、仕込みの手間が減る。賃上げでかさむぶんを、どこかで取り返したい。この制度は、その最初の費用を軽くしてくれるかもしれない。

こういう補助金は、これまで使ったことがない。今回は、はじめて考えてみようと思っている。ただ、記事が言うとおり、お金は後払いだし、手続きも軽くはない。券売機はうちには要らないし、ほかの設備はもうある。だから僕がねらうのは、急速冷凍機ひとつ。身の丈で、慌てずに調べてみる。

編集長 西村まさゆき
この記事をシェア
LINEX