原価・お金2026.07.10予兆

倒産は過去最多。なのに大手は出店を増やしている

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飲食店の倒産は、2025年に900件で過去最多となった。

でも同じ時期に、外食チェーンは出店計画を増やしている。主要43社の2026年度の計画は、前の年度より521店多い。

店が減っているのではなく、入れ替わっている。 空いた場所を取りにいくのは、お金のある側だ。

だから小さな店には、「良い立地が安く空く」チャンスより先に、「隣に強い競合が来る」形で届く可能性がある

ただし、これはまだ出店“計画”の段階の話で、実際にそうとは限らない。

業態トレンド予報

予兆。 出店計画は、実際の出店より数か月から1年ほど早く出てくる。

倒産の数字は「過去の結果」、出店計画は「これからやる気」を表す。二つが逆を向くのは、変化が始まる入口だと読める。

ただし、計画は取りやめになることもある。だから段階は「予兆」にとどめる。

何が起きているか

帝国データバンクによると、2025年の飲食店の倒産は900件。前の年(894件)を上回り、過去最多を更新した。原因は、食材費・人件費・光熱費が上がったこと。値上げに踏み切れない中小・零細を中心に、倒産は高い水準が続くと見られている(事実:帝国データバンク)。

一方で、店が増える側もある。商業施設新聞のまとめでは、主要な外食43社の2026年度の出店計画は合わせて3,373店以上で、2025年度より521店の増加だ(事実:商業施設新聞、2026-06-23)。中部でも、主要5社のうち3社が今期の計画を前期の実績より増やしている(事実:中部経済新聞、2026-07-01)。

倒産が過去最多の年に、出店計画は増えている。

ただし注意がいる。出店計画が最も多いゼンショーホールディングスの1,300店超は、海外1,174店・国内145店とほとんどが海外だ(事実:日本経済新聞)。「国内で出店ラッシュ」とまとめると、事実を読み違える。

なぜ今なのか

コスト高という同じ圧力が、体力のない側を退出させ、体力のある側に空いた場所を渡しているからだ(推測)。

チェーンは、大量に仕入れ、セントラルキッチン(料理をまとめて作る専用の厨房)を使い、人手を減らした運営で、コストの上昇を吸収できる。一方、中小・零細には、その手立てが少ない(cand-02 で見たとおり)。

大手はどう動いているか

出店は、ただ数を増やしているだけではない。すかいらーくホールディングス傘下の「資さんうどん」は、2026年に年間30店の新規出店と台湾への進出を計画している(事実:報道)。うどんという単品業態にお金を集める動きだ。

麻辣湯の広がり(cand-04)と同じで、一皿に絞った業態が出店の主役になりつつある。つまりチェーンは、「空いた場所に」「絞った業態を」「人手を減らした形で」入れている。

小さな飲食店にどう関係するか

関係する店

  • 繁華街・駅前・商業施設の近くで営業している店。店が抜けた区画が出れば、入るのはチェーンの可能性が高い。
  • 同じ業態の競合が来ると、客数がそのまま減る店(定食・うどん・中華など、チェーンが得意な業態)。
  • 働き手をパート・アルバイトに頼っている店。新規出店は、客だけでなく人手の奪い合いも連れてくる。

関係しない店

  • 商圏がせまく、常連との関係で成り立っている店。チェーンが選びにくい立地だ。
  • すでに客単価と納得感で「壁の外」にいる店(cand-02)。価格で競わないので、直接はぶつからない。

真似しない方がいい部分

「潰れた店の跡地が、安く手に入る」という期待で計画を立てないほうがいい。

倒産が増えれば居抜き物件(設備を残したまま次の人に貸す店舗)が市場にあふれる、と考えたくなる。でも、そうとは限らない。

業界の実務者からは、市場に出てくる居抜き物件の数は、10年前からあまり変わっていないという指摘がある。さらに、都心を中心に不動産の価格が上がっているため、借りる側の家賃の負担は、むしろ重くなると見られている(報道・実務者の指摘。確度は低く、一次統計での裏づけは未確認)。

良い区画は、市場に出る前に決まってしまう。「空くのを待つ」という戦略は、待っている間に埋まる(推測)。お金のある側のほうが、早く、確実に手を打てるからだ。

大手のやり方は、規模とお金があって初めて成り立つ。小さな店が真似できるのは業態の考え方だけで、出店の速さは真似できない。

反対意見・失敗の可能性

  • 出店計画は、あくまで計画だ。 中部経済新聞自身が「中東混乱で機運がしぼむ可能性」に触れている。景気や海外情勢しだいで、取りやめもある。
  • 首位ゼンショーの出店は、大半が海外(国内145店)。43社合計にも海外分が含まれ、「国内で店が増える」とは限らない。この見立ての、いちばんの弱点だ。
  • 地方と都心では、事情が正反対になりうる。人口が減っている地域では、空いた区画がそのまま空き続ける。
  • 編集長の商圏では、この見立てはまだ確認できていない。 三浦半島ではこの1年で定食屋・カフェ・ピザ屋が閉店したが、閉店した区画に誰が入ったのかは確認できていない。郊外や住居圏では、新しく入るのがチェーンとは限らず、移住者の個人店であることもある。
  • 倒産が増えることは、裏を返せば同じ業態の競合が減ることでもある。生き残った店には、客が回ってくる面もある。

予報の確度

中〜低。 「倒産が過去最多」(帝国データバンク)と「出店計画が増えている」(商業施設新聞・中部経済新聞)という二つの事実は、それぞれ確度が高い。

しかし、この二つを『チェーンが空いた場所を取りにいく』と結びつけるのは推測だ。国内で店が実際に何店増えたのか、居抜き物件がどれだけ出ているのか、裏づけはまだ取れていない。

この記事は、確定した統計を待たずに、出店計画という早い段階の指標をもとに書いている。数か月後に、計画が取りやめになったり、国内で店がほとんど増えていなかったりしたら、この予報は外れだ。そのときは、訂正の記事を出す。

情報源・確認日を見る

記者 安東 菜津

編集長手記

この記事は、倒産で空いた場所を、資本のあるチェーンが取りにいく、と書いている。読みながら、この一年のうちの商圏を思い返していた。

たしかに、店は消えた。僕も時々行っていた定食屋が閉店した。人気店だったカフェも、有名なピザ屋も閉店した。

では、その跡地に誰が入ったのか。正直に言うと、僕は知らない。この一年で新しく開いた店といえば、都内で人気だったパン屋が移住してきて、住居圏の店として開いた。ただしそれは、閉店した店の跡地ではなく、まったく別の場所だ。だから記事の見立てが自分の商圏に当てはまるのかどうか、僕にはまだ判断がつかない。都心の話なのかもしれないし、これから来るのかもしれない。

読んでいて、自分が何を怖がっているのかは、はっきりした。安さで来るチェーンは、実はあまり怖くない。うちとは競合しないからだ。怖いのは、たとえば大戸屋のようなチェーンが、地魚や三浦野菜を使い始めて出てくることだ。価格ではなく「らしさ」で来られたとき、こちらの拠り所がそのまま持っていかれる。資本は、安さだけでなく納得感も買える。 そのことに、この記事を読んで初めて言葉が追いついた。

だから今、僕は店を増やすことを考えていない。まだまだ自分の店を良くするフェーズだ。良い場所が空いたとしても、動くのは来年以降だと思う。記事は「空くのを待っていると埋まる」と書いていたけれど、僕の場合は待っているというより、まだ出る準備ができていないのだと分かった。

編集長 西村まさゆき
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