飲食店の倒産は、2025年に900件で過去最多となった。
でも同じ時期に、外食チェーンは出店計画を増やしている。主要43社の2026年度の計画は、前の年度より521店多い。
店が減っているのではなく、入れ替わっている。 空いた場所を取りにいくのは、お金のある側だ。
だから小さな店には、「良い立地が安く空く」チャンスより先に、「隣に強い競合が来る」形で届く可能性がある。
ただし、これはまだ出店“計画”の段階の話で、実際にそうとは限らない。
予兆。 出店計画は、実際の出店より数か月から1年ほど早く出てくる。
倒産の数字は「過去の結果」、出店計画は「これからやる気」を表す。二つが逆を向くのは、変化が始まる入口だと読める。
ただし、計画は取りやめになることもある。だから段階は「予兆」にとどめる。
帝国データバンクによると、2025年の飲食店の倒産は900件。前の年(894件)を上回り、過去最多を更新した。原因は、食材費・人件費・光熱費が上がったこと。値上げに踏み切れない中小・零細を中心に、倒産は高い水準が続くと見られている(事実:帝国データバンク)。
一方で、店が増える側もある。商業施設新聞のまとめでは、主要な外食43社の2026年度の出店計画は合わせて3,373店以上で、2025年度より521店の増加だ(事実:商業施設新聞、2026-06-23)。中部でも、主要5社のうち3社が今期の計画を前期の実績より増やしている(事実:中部経済新聞、2026-07-01)。
倒産が過去最多の年に、出店計画は増えている。
ただし注意がいる。出店計画が最も多いゼンショーホールディングスの1,300店超は、海外1,174店・国内145店とほとんどが海外だ(事実:日本経済新聞)。「国内で出店ラッシュ」とまとめると、事実を読み違える。
コスト高という同じ圧力が、体力のない側を退出させ、体力のある側に空いた場所を渡しているからだ(推測)。
チェーンは、大量に仕入れ、セントラルキッチン(料理をまとめて作る専用の厨房)を使い、人手を減らした運営で、コストの上昇を吸収できる。一方、中小・零細には、その手立てが少ない(cand-02 で見たとおり)。
出店は、ただ数を増やしているだけではない。すかいらーくホールディングス傘下の「資さんうどん」は、2026年に年間30店の新規出店と台湾への進出を計画している(事実:報道)。うどんという単品業態にお金を集める動きだ。
麻辣湯の広がり(cand-04)と同じで、一皿に絞った業態が出店の主役になりつつある。つまりチェーンは、「空いた場所に」「絞った業態を」「人手を減らした形で」入れている。
「潰れた店の跡地が、安く手に入る」という期待で計画を立てないほうがいい。
倒産が増えれば居抜き物件(設備を残したまま次の人に貸す店舗)が市場にあふれる、と考えたくなる。でも、そうとは限らない。
業界の実務者からは、市場に出てくる居抜き物件の数は、10年前からあまり変わっていないという指摘がある。さらに、都心を中心に不動産の価格が上がっているため、借りる側の家賃の負担は、むしろ重くなると見られている(報道・実務者の指摘。確度は低く、一次統計での裏づけは未確認)。
良い区画は、市場に出る前に決まってしまう。「空くのを待つ」という戦略は、待っている間に埋まる(推測)。お金のある側のほうが、早く、確実に手を打てるからだ。
大手のやり方は、規模とお金があって初めて成り立つ。小さな店が真似できるのは業態の考え方だけで、出店の速さは真似できない。
中〜低。 「倒産が過去最多」(帝国データバンク)と「出店計画が増えている」(商業施設新聞・中部経済新聞)という二つの事実は、それぞれ確度が高い。
しかし、この二つを『チェーンが空いた場所を取りにいく』と結びつけるのは推測だ。国内で店が実際に何店増えたのか、居抜き物件がどれだけ出ているのか、裏づけはまだ取れていない。
この記事は、確定した統計を待たずに、出店計画という早い段階の指標をもとに書いている。数か月後に、計画が取りやめになったり、国内で店がほとんど増えていなかったりしたら、この予報は外れだ。そのときは、訂正の記事を出す。
記者 安東 菜津
この記事は、倒産で空いた場所を、資本のあるチェーンが取りにいく、と書いている。読みながら、この一年のうちの商圏を思い返していた。
たしかに、店は消えた。僕も時々行っていた定食屋が閉店した。人気店だったカフェも、有名なピザ屋も閉店した。
では、その跡地に誰が入ったのか。正直に言うと、僕は知らない。この一年で新しく開いた店といえば、都内で人気だったパン屋が移住してきて、住居圏の店として開いた。ただしそれは、閉店した店の跡地ではなく、まったく別の場所だ。だから記事の見立てが自分の商圏に当てはまるのかどうか、僕にはまだ判断がつかない。都心の話なのかもしれないし、これから来るのかもしれない。
読んでいて、自分が何を怖がっているのかは、はっきりした。安さで来るチェーンは、実はあまり怖くない。うちとは競合しないからだ。怖いのは、たとえば大戸屋のようなチェーンが、地魚や三浦野菜を使い始めて出てくることだ。価格ではなく「らしさ」で来られたとき、こちらの拠り所がそのまま持っていかれる。資本は、安さだけでなく納得感も買える。 そのことに、この記事を読んで初めて言葉が追いついた。
だから今、僕は店を増やすことを考えていない。まだまだ自分の店を良くするフェーズだ。良い場所が空いたとしても、動くのは来年以降だと思う。記事は「空くのを待っていると埋まる」と書いていたけれど、僕の場合は待っているというより、まだ出る準備ができていないのだと分かった。