麻辣湯(マーラータン)の店が一気に増えた。ただ、そろそろ「増えすぎ注意」のサインも出てきた。
小さな店が学びたいのは「次に何が流行るか」を当てることではない。麻辣湯がなぜ広がったのかを分けて考え、自分の店に取り入れられる部分だけをもらうことだ。
いちばん効いたのは「自分で選ぶ楽しさ」。これは麻辣湯を出さなくても、いまのメニューに少しだけ足せる。
ブームをまるごと追うのはおすすめしない。流行が去った後、そろえた設備や食材が重荷になりやすいからだ。
飽和注意(かんたんに言うと、店が増えすぎるかもしれない)。
出店は全国へどんどん広がっている。一方で「タピオカや唐揚げの次のブームになるのでは」という熱の高まりも指摘されている。
これから、生き残る店と消える店に分かれていく。定着も同時に進む。だから後からブームだけを追う個人店は、埋もれてしまう心配が大きい。
麻辣湯の店が、中華の店のなかでとびぬけて増えている。
株式会社Review が全国470か所の保健所の開業情報を独自に集計した。それによると、2022年1月〜2025年11月で中華の店全体は約−31%と減った。そのなかで麻辣湯は約8.5倍に増えた。
2025年11月の時点では、中華で新しく開いた店の13.4%が麻辣湯の専門店だった(事実:株式会社Review、2025-11-27発表)。
増えているのは都市だけではない。これまで開業のなかった宮城・茨城でも2025年に新しい店ができた。北海道でも初の専門店が計画されている。地方へも広がっている(事実:同)。
きっかけは一つではない。いくつかの理由が重なった(事実+推測)。
本場の大きなチェーンが、日本の市場を取りにきている。
世界に約7,000店ある楊国福は日本で26店ほど。日本の専門店の元祖といえる七宝麻辣湯は50店を超える。世界に6,000店を超える張亮は、日本の10店から2026年に約50店へ増やす計画を出している(事実:各社・報道)。
自分で選ぶ注文は、券売機やタッチパネルにすれば人手を減らしやすい。だからチェーンで店を増やすのに向いている(推測)。
「麻辣湯そのものを丸ごと始める」のは、後から入る個人店には危なさが大きい。
ブームは、生き残る店と消える店に分かれる時期に入りつつある。専用の食材・設備・やり方をそろえた後にブームが去ると、そろえたものが重荷になる(推測)。
さらに、量り売りや自分で選ぶ方式は、値段が客に見えにくい。「仕組みを知らずに会計が3,000円を超えた」という不満も報じられている(事実:報道)。
真似るなら、店の形そのものではない。「選ぶ楽しさ」という仕組みだけを、いまのメニューに小さく取り入れるほうが安全だ。
中。
「麻辣湯が急に増えている」という事実は、開業データで裏づけられている。ここは確かさが高い。
ただし「これから増えすぎで終わる」のか「根づく」のかは、専門家の見方が分かれている。ここは言い切れない。
だからこの記事は「次を当てる」より「理由を分けて、使える部分だけを取り入れる」ことをすすめている。どちらに転んでも損をしない構えだからだ。
記者 安東 菜津
「業態を丸ごと追わず、選ぶ楽しさだけを移植する」。この記事を読んで、正直どきっとした。
うちのもったいない食堂は、基本おまかせの定食だけど、メインの魚だけはその日あるものから選べるようにしている。専用の食材をそろえたわけじゃなく、いまある仕入れの中から選んでもらう形だ。おかずは日替わりだし、メインを選べれば、何日続けて来ても毎日違う一皿になる。正直これまでは「もったいないの工夫」くらいにしか思っていなかった。
でも読み終えて、これは流行に乗らなくても「選ぶ楽しさ」だけが残る仕組みでもあったんだ、と気づけた。自分がやっていることの意味を、記事のほうから教わった気分だ。僕もまだ、一本ごとに学んでいる。