開業2026.07.09飽和注意

麻辣湯の次を探す前に、麻辣湯が広がった理由を分解する

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麻辣湯(マーラータン)の店が一気に増えた。ただ、そろそろ「増えすぎ注意」のサインも出てきた。

小さな店が学びたいのは「次に何が流行るか」を当てることではない。麻辣湯がなぜ広がったのかを分けて考え、自分の店に取り入れられる部分だけをもらうことだ。

いちばん効いたのは「自分で選ぶ楽しさ」。これは麻辣湯を出さなくても、いまのメニューに少しだけ足せる。

ブームをまるごと追うのはおすすめしない。流行が去った後、そろえた設備や食材が重荷になりやすいからだ。

業態トレンド予報

飽和注意(かんたんに言うと、店が増えすぎるかもしれない)。

出店は全国へどんどん広がっている。一方で「タピオカや唐揚げの次のブームになるのでは」という熱の高まりも指摘されている。

これから、生き残る店と消える店に分かれていく。定着も同時に進む。だから後からブームだけを追う個人店は、埋もれてしまう心配が大きい。

何が起きているか

麻辣湯の店が、中華の店のなかでとびぬけて増えている。

株式会社Review が全国470か所の保健所の開業情報を独自に集計した。それによると、2022年1月〜2025年11月で中華の店全体は約−31%と減った。そのなかで麻辣湯は約8.5倍に増えた。

2025年11月の時点では、中華で新しく開いた店の13.4%が麻辣湯の専門店だった(事実:株式会社Review、2025-11-27発表)。

増えているのは都市だけではない。これまで開業のなかった宮城・茨城でも2025年に新しい店ができた。北海道でも初の専門店が計画されている。地方へも広がっている(事実:同)。

なぜ今なのか

きっかけは一つではない。いくつかの理由が重なった(事実+推測)。

  • 自分で選ぶ楽しさ。 麺・具・辛さ・スープを自分で選べる。だから同じ一杯を二度食べなくてすむ。この「選ぶ体験」そのものが魅力になっている。
  • SNS・TikTok。 若い女性を中心に食べた感想がたくさん投稿された。見た目と体験が広がりに乗った。
  • 有名人の紹介。 テレビやSNSでの紹介が後押しした。
  • 韓国からの流行の波。 2018〜2019年の「マー活」が土台になった。そこに二度目のブームとして火がついた。

大手・チェーンはどう動いているか

本場の大きなチェーンが、日本の市場を取りにきている。

世界に約7,000店ある楊国福は日本で26店ほど。日本の専門店の元祖といえる七宝麻辣湯は50店を超える。世界に6,000店を超える張亮は、日本の10店から2026年に約50店へ増やす計画を出している(事実:各社・報道)。

自分で選ぶ注文は、券売機やタッチパネルにすれば人手を減らしやすい。だからチェーンで店を増やすのに向いている(推測)。

小さな飲食店にどう関係するか

関係する店

  • メニューに「選ぶ楽しさ」を足せそうな店(トッピングや辛さ、具を選べるようにするなど)。
  • 常連さんに飽きられないよう、少ない仕込みで変化を出したい店。

関係しない店

  • ブームに乗ることだけを目的に、専用の設備や食材を一式そろえようとしている店(後で書くように危なさが大きい)。
  • すでに看板が固まっていて、店のスタイルを変える必要のない店。

真似しない方がいい部分

「麻辣湯そのものを丸ごと始める」のは、後から入る個人店には危なさが大きい。

ブームは、生き残る店と消える店に分かれる時期に入りつつある。専用の食材・設備・やり方をそろえた後にブームが去ると、そろえたものが重荷になる(推測)。

さらに、量り売りや自分で選ぶ方式は、値段が客に見えにくい。「仕組みを知らずに会計が3,000円を超えた」という不満も報じられている(事実:報道)。

真似るなら、店の形そのものではない。「選ぶ楽しさ」という仕組みだけを、いまのメニューに小さく取り入れるほうが安全だ。

反対意見・失敗の可能性

  • すでに店が増えすぎていて、後から入る個人店は埋もれる心配が高い。
  • ブームの真似は、流行が去った後に在庫や設備が重荷になる。
  • 一方で「食文化として根づく」という見方もある。増えすぎで終わるのか、根づくのか、まだ決まっていない。「増えすぎ注意」を言いすぎると、根づく側の見立てを見落とすかもしれない。

予報の確度

中。

「麻辣湯が急に増えている」という事実は、開業データで裏づけられている。ここは確かさが高い。

ただし「これから増えすぎで終わる」のか「根づく」のかは、専門家の見方が分かれている。ここは言い切れない。

だからこの記事は「次を当てる」より「理由を分けて、使える部分だけを取り入れる」ことをすすめている。どちらに転んでも損をしない構えだからだ。

情報源・確認日を見る

記者 安東 菜津

編集長手記

「業態を丸ごと追わず、選ぶ楽しさだけを移植する」。この記事を読んで、正直どきっとした。

うちのもったいない食堂は、基本おまかせの定食だけど、メインの魚だけはその日あるものから選べるようにしている。専用の食材をそろえたわけじゃなく、いまある仕入れの中から選んでもらう形だ。おかずは日替わりだし、メインを選べれば、何日続けて来ても毎日違う一皿になる。正直これまでは「もったいないの工夫」くらいにしか思っていなかった。

でも読み終えて、これは流行に乗らなくても「選ぶ楽しさ」だけが残る仕組みでもあったんだ、と気づけた。自分がやっていることの意味を、記事のほうから教わった気分だ。僕もまだ、一本ごとに学んでいる。

編集長 西村まさゆき
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